
先週(3/8),松屋銀座8階イベントスクエアで3/11まで行われていた,「杉岡華邨展」に行ってきました。
杉岡華邨(すぎおかかそん)は,現代かな書の世界で有名な書家で,2000年には文化勲章を受賞しています。
2012年3月に98歳で亡くなりました。
今回は,華邨の生誕100年を祈念した回顧展です。
「杉岡先生の作品を観るとかなの作品づくりの参考になりますよ」と,私が師事している先生に勧められました。
華邨は,三人の違う先生に師事したと説明がありました。
そのため,作品には年代ごとにその先生方から学んだものの特徴がよく現れているように思えました。
チラシの表紙の写真は,1983年に日本芸術院賞を取った作品(上)と,日本画家・中路融人との合作(下)です。

上の作品は,古筆(かなの名筆)を学んだ時のもの。
比較的初期の作品です。
かなの古典の線や構成をとりいれた,美しい作品です。
どれもすばらしい作品ばかり。
観ていると,あっという間に時間が経ちました。
なかでも,今回私が一番すばらしいと思ったのは,彼の最後の作品です。

これがその作品です。
たてよこ,1メートルほどの大きさです。
先ほどの3つの作品とは,少し趣が違います。
その理由は会場で流れていた,華邨の紹介VTRから知ることができました。
彼は,亡くなる数年前に脳梗塞で倒れ,右手の自由が利かなくなりました。
それでも,筆の下の方を持ち,持った右手に左手を添えて,手首で紙をこするように書いていました。
VTRの華邨は,書いたものを掲げて眺めては直すことを何度もくりかえしていました。
それで完成したのが上の写真の作品です。
一見,かならしくない太い線で書いていますが,その線は90代とは思えないほどのし力強さで,線の流れも美しく,それぞれの行も互いに調和がと取れていています。
私の先生の話だと,この「行と行の響き合うような書き方」が華邨のかな書のすばらしさなのだそうです。
第一級の書家が思うように書けないとき,そのつらさはどれほどのものだったのでしょう。
華邨はほんとうに書が好きだったのしょう。
作品を観ていると,胸にこみ上げてくるものがありました。
今回展示されていた作品は,すべて,出身地である奈良市杉岡華邨美術館に展示されているとのこと。
どんな場所でどんな気持ちで書いたのか書いたのか…。
美術館で観たら少しは感じることができるかもしれません。
機会があれば行ってみたいなあ,と思いました。
今回は,今後の自分の作品づくりの参考になったのはもちろん,書道にたいする気持ちの持ち方も学んだような気がしました。
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