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 ※今回の記事については,主に特別展「書聖 王羲之」の図録で勉強して書きました。

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(王羲之筆 大報帖(たいほうじょう)書聖 王羲之展図録より)

 先日観てきた「書聖 王羲之」展では,「双鉤塡墨(そうこうてんぼく)」という精巧な技法で作られた模本が紹介されています。
 模本の作り方には,ほかに能書(上手な書き手)が原本そっくりにまねて書く「臨書」があります。
 しかし,臨書という方法では書き手の癖がどうしてもでてしまい,原本を忠実に再現するのはむずかしいといわれます。
 
では,双鉤塡墨とはどんな方法なのか?

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(双鉤塡墨の実演の様子,『毎日新聞』2013年1月13日)
 
 まず,上の写真のように,原本に薄い紙をあてて,まず,文字の輪郭をとります。
 そして,その輪郭の内側を穂先のきいた細い筆を使って墨で塗りつぶしていきます。
 この方法のすごさは,ただ塗りつぶすだけでなく,原本の微妙なかすれ具合や,虫食いの跡なども忠実にまねながら塗りつぶし,再現するところです。
 たとえば「かすれ」は,バーコードのような極細の線の集合よって再現されているのです。
 まるで,「ドット」で作る画像のようです。
 
この技法は,中国の初唐,太宗皇帝が,王羲之の書を残したいと,国中から専門家を集めて作らせたとのこと。
 そのため,この技法はその時代に非常に発達し,模本の技術者として後世に名を残した人もいるほどです。

 今回の会場ではその技法の実演の動画を流したりして,わかりやすく解説していました。
 そして,この方法で書かれた,「大報帖(上の写真)」,「孔侍中帖(こうじちゅうじょう)」,「行穰穰(こうじょうじょう)」,「喪乱帖(そうらんじょう)」,「姉妹帖(しまいじょう)」,
など貴重な書が展示されていました。
 
 上の写真ではつたわりづらいですが,「これが本当にそのような方法で書かれたものなの?」というくらい。まるで「かすれ」も表現されてすらすらとひと筆で書いたかのようでした。
 ほんとうにびっくりです。
 
 以前2月8日にも書きましたが,書聖と言われる王羲之の真跡(肉筆の書)は見つかっていません。
 でも,この精巧な模本の技術のすごさを知ると,模本ではあっても「ほぼホンモノの大羲之の書」が観れると言っていいような気がします。
 
 この双鉤塡墨というのは,現在の”コピー”です。
 今から1300年も前,コピー機もない時代の”コピー”。
 どうにかよいものを残したい,そのすばらしいものを自分もほしい,という気持ちは今も同じかもしれません。
 このすばらしい専門家によって作られた王羲之の書のコピーが現在まで残り,私たちもその書のすばらしさを感じることができて,それを学ぶことができています。

 これから自分も臨書する際には,この模本の技術の「書」に対する熱意も思い浮かべながら,取り組んでいきたいなあと~と思いました。

 ※[書聖 王羲之展]は東京国立博物館で,あさって3月3日(日)まで開催されています。
 今週末で最後となりますが,興味のある方はぜひ,行ってみてはいかがでしょうか。
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[2013/03/01 15:20] | 書道展
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